「成長痛」と思ったらセーバー病だった|親が見落とすサイン
「うちの子、最近かかとが痛いって言うんです」
「整形外科では『成長痛だから、しばらく休めば治る』と言われたけど…」
「サッカーから帰ってくると、足を引きずるように歩いていて心配で…」
——お子さんのかかとの痛みで、こんな悩みを抱えている親御さんは少なくありません。
「成長痛」という言葉はとても便利で、ある意味、安心感を与える説明でもあります。
でも実は、成長期のお子さんのかかとの痛みには、医学的にちゃんと名前のついた状態がいくつかあり、その代表が「セーバー病」と呼ばれるものなんです。
今回は、よくいただくご相談を例に、「成長痛」と片付けてしまう前にチェックすべきサイン、そして改善への道筋について書きたいと思います。
「サッカーから帰ると足を引きずる」H君の話
先日、こんなご相談がありました。
小学4年生の男の子、H君。
サッカー少年団に所属していて、週に4日、平日の夕方と土日に練習や試合があります。
お母さまと一緒にご来院されました。
「2ヶ月くらい前から、サッカーの練習の後に『かかとが痛い』と言うようになったんです。最初はそんなに気にしていなかったんですけど、最近は朝起きた時にも『かかとが痛い』って言って、足を引きずるように歩いていて。」
「整形外科では『成長痛でしょう』と言われて、湿布をもらっただけだったんです。でも、ネットで調べたら『セーバー病』というのが出てきて。これってどう違うんでしょうか?」
— H君のお母さま(小4・サッカー少年団のご家族)
このH君のお話、
「成長痛と言われたけど、本当にそうかな?」うちも同じようなこと言われた…
などの経験があれば、ぜひ最後まで読んでみてください。
そもそもセーバー病とは何か
H君のように、成長期のお子さんで「かかとが痛い」という症状を起こす代表的な状態が、「セーバー病」です。正式には「踵骨骨端症(しょうこつこったんしょう)」、英語では「calcaneal apophysitis(カルカニアル・アポフィサイティス)」と呼ばれる状態です。
成長期のお子さんのかかとの骨には、まだ完全に骨化していない「成長軟骨(骨端線)」と呼ばれる部分があります。アキレス腱がかかとの骨に付着している部分の近くにあり、まだやわらかい組織です。
サッカーのキック、走る、ジャンプ
——これらの動作のたびに、ふくらはぎの筋肉がアキレス腱を通してこの成長軟骨を引っ張ります。繰り返しの引っ張りで、成長軟骨に炎症が起こる——これがセーバー病の正体です。
セーバー病は、成長期のお子さんに起こるかかとの痛みの中で最も多い原因とされています。男の子で8〜15歳、女の子で7〜12歳ごろに起こりやすく、特にサッカー・バスケットボール・体操・陸上など、走ったり跳んだりするスポーツをしているお子さんに多い症状です。
つまり、H君のような「成長期×サッカー」という組み合わせは、まさに典型的な発症パターン。
そして大切なのは、「ただの成長痛」ではなく、原因のはっきりした状態だということです。
「成長痛」とセーバー病はここが違う
「成長痛」と「セーバー病」、何が違うのでしょうか。実は、医学的に「成長痛」という診断名には、明確な特徴があります。
一般的な「成長痛」の特徴
・主に夕方〜夜、寝る前や夜中に痛む ・痛む場所が「日によって違う」(両足、足首、ひざなど)
・押しても痛い場所がはっきりしないことが多い
・朝起きた時には痛みがほぼ消えている
・診察や検査で特別な異常が見つからない
セーバー病の特徴
・かかと(の後ろ側・側面)がピンポイントで痛む
・運動中・運動後に痛む
・朝起きた時の最初の一歩で痛むことがある
・かかとを両側から押すと痛む(ピンチテスト)
・つま先立ちで痛みが強く出ることがある
・ふくらはぎが硬い、足首が反りにくいといった所見を伴う
H君のように
「かかとがピンポイントで痛む」
「運動後に痛む」
「朝起きた時も痛い」
「足を引きずる」
というのは、いわゆる「成長痛」ではなく、セーバー病の典型的なサインです。
親が見落としやすい3つのサイン
ここで、セーバー病で親御さんが見落としやすいサインを3つご紹介します。これは、ご相談に来られる親子のお話を伺っている中で、共通して見えてくるパターンです。
サイン1 痛む場所が「かかと」にハッキリしている
「足が痛い」と言われると、なんとなく漠然と捉えてしまいがちですが、お子さんに「どこが痛いの?」と指さしてもらってください。
かかとの後ろ、または側面をピンポイントで指さしたら、セーバー病を疑うサインです。
サイン2 朝の最初の一歩で痛がる
「夕方になると痛がる」だけなら成長痛の可能性もありますが、朝起きてベッドから降りた瞬間や、登校の歩き出しで「痛い」
「足を引きずる」のは、組織に炎症がある証拠。
これはセーバー病の典型です。
サイン3 走り方・歩き方が変わってきた
痛みを言葉でうまく伝えられないお子さんも多いです。ですが、観察していると——つま先立ちで歩いている、片足を引きずっている、走るのを嫌がる、踏み込む足を変える、といった「動きの変化」が現れます。これが最も早く気づけるサインかもしれません。
3つすべてが揃っていなくても…
1つでも当てはまれば、セーバー病の可能性を考えて、一度専門家に相談してみることをおすすめします。
お子さん自身が痛みをうまく言葉にできないことも多いので、親御さんの「観察」がとても大切なんです。
「成長痛だから様子見」では足りない理由
「セーバー病は成長が止まれば治る」
「だから様子見でいい」——こう言われることが多いのは事実です。
確かに医学的にも、セーバー病はかかとの成長軟骨が骨化する時期(15〜17歳ごろ)になると、自然に治る経過をたどることがほとんどです。
でも、「待つ」ことには問題があります。
痛みの間、お子さんがスポーツを楽しめない
小学生・中学生の時期は、お子さんがスポーツに夢中になる大切な時期です。痛みをかばう日々が続けば、チームメイトに置いていかれる焦り、レギュラーから外れる悔しさなど、精神的な影響も大きくなります。
「動作のクセ」「足部の問題」は成長で消えない
セーバー病の背景には、ふくらはぎの硬さ、足部のアライメント(過回内・扁平足)、走り方・着地のクセなど、成長が止まっても残る要因があります。これらは将来、別の障害(オスグッド、シンスプリント、足底腱膜炎など)の引き金にもなりやすいのです。
「成長が止まれば治る」のは「痛み」だけです。
原因にある「ふくらはぎの硬さ」「足部の使い方」は、意識的に向き合わない限り変わりません。
今のうちに対処することは、その先の何年もの怪我リスクを下げることにつながります。
放っておくとどうなる?
セーバー病をそのままにしていると、こんなふうに進行することがあります。
👉 サッカーや運動を、痛みでやめなければならなくなる
👉 痛みをかばう歩き方が、ひざ・腰・反対側の足にも影響を及ぼす
👉 慢性化し、改善まで時間がかかるようになる
👉 オスグッド・シンスプリントなど、他の成長期の障害にもつながりやすくなる
当院は「100年歩ける身体づくり」を理念に掲げていますが、成長期の足のトラブルは、その先の何十年もの足の健康に影響します。
今のうちに「動きの土台」を整えておくことが、お子さんの未来への投資になります。
改善への道筋|H君の3ヶ月
セーバー病のケアは、複数の研究レビューでも「活動量の調整+ふくらはぎのストレッチ+足部の土台補正+アイシング」の組み合わせが推奨されています。
手術が必要になることはほぼなく、保存療法で対応できる症状です。
具体的にどんなことに取り組むのか。
冒頭でご紹介したH君が実際にやってきたことを、時系列でご紹介。
かかとの痛みのある場所の確認(ピンチテスト)、ふくらはぎの柔軟性チェック、足部のアライメント評価、走り方・ジャンプ動作の分析。H君の場合、ふくらはぎがかなり硬く、加えて右足の過回内(扁平足気味)が顕著でした。スパイクもサイズが少し小さくなりかけていたことも判明しました。
完全に運動を止めるのではなく、痛みのレベルに応じて練習量を調整。試合は出るが練習はメニューを減らす、走り込みは控える、といった段階調整をチームのコーチにも共有してもらいました。ふくらはぎのストレッチを毎日3〜4回(特に練習前後)、運動後のアイシング(10〜20分)を習慣に。
足部の過回内に対しては矯正用インソール(フォームソティックス・メディカル)を導入。スパイクと普段履きのシューズも、サイズと形状を見直して買い替えを提案しました。並行して、お尻・体幹の筋力強化、着地でかかとに衝撃を集中させない動作の練習も進めていきます。
痛みの状況を見ながら、少しずつ走る量・ジャンプの量を戻していきます。H君は3ヶ月目には、フル練習でも痛みが出ない日が増えていきました。
「成長痛だからって何もできないと言われた時は、本当にがっかりしました。でも、ちゃんと原因があると分かって、対処法もあると教えてもらえて、親としてもホッとしました。本人もサッカーをまた全力でできるようになって、本当に嬉しそうです。」
— 3ヶ月後のH君のお母さま
※ここでご紹介したケースは、当院でよくいただくご相談の流れを再構成した典型例です。改善のスピードや経過は、お子さんの年齢・成長段階・スポーツ種目・取り組み方などによって個人差があります。
「成長痛だから」と片付ける前に
セーバー病は、「ふくらはぎの硬さ」「足部のアライメント」「練習量の急増」「合わない靴」など、原因のはっきりした要素が関わっている状態です。
原因がある以上、対処の方法も存在します。
ただ、これらは湿布や安静だけでは戻らない部分。
ふくらはぎのストレッチ、足部の土台補正、靴の見直し、活動量の調整を組み合わせることで改善が期待できます。
もし今、「うちの子もそうかも」と思った親御さんがいらっしゃったら、それは早く気づけたという、とても良いタイミングです。長引かせるほどお子さんのモチベーションにも影響しますので、できれば早めに専門家へご相談ください。
当院でなくても構いません。
お子さんの足やスポーツ動作までしっかり評価してくれる治療院や整形外科であれば、相談する価値は十分にあります。「成長痛だから様子見」で終わらせないでください。
鳥取市でセーバー病・かかとの痛みのご相談は
「練習後にかかとを痛がる」「成長痛と言われたけど不安」「サッカーを続けさせていいか迷っている」など、些細なことでも遠慮なくご相談ください。
- 📍 鳥取市内でアクセス便利
- ⚽️ お子さんのスポーツ障害に対応
- 🦶 靴・インソール・動作改善も可能
- 🔍 原因に合わせた丁寧なご説明(保護者の方にもわかりやすく)
※ 強い腫れ・骨折の疑い・他の骨端症が考えられる場合は、整形外科等への受診をご案内することがあります。
- James AM, Williams CM, Haines TP. Effectiveness of interventions in reducing pain and maintaining physical activity in children and adolescents with calcaneal apophysitis (Sever’s disease): a systematic review. J Foot Ankle Res. 2013;6(1):16.
- Smith JM, Varacallo M. Sever Disease. StatPearls Publishing. (Updated)
- Wiegerinck JI, Yntema C, Brouwer HJ, Struijs PA. Incidence of calcaneal apophysitis in the general population. Eur J Pediatr. 2014;173(5):677-679.
- Belikan P, Färber LC, Abel F, Nowak TE, Drees P, Mattyasovszky SG. Incidence of calcaneal apophysitis (Sever’s disease) and return-to-play in adolescent athletes of a German youth soccer academy: a retrospective study of 10 years. J Orthop Surg Res. 2022;17(1):83.
- Ramponi DR, Baker C. Sever’s Disease (Calcaneal Apophysitis). Adv Emerg Nurs J. 2019;41(1):10-14.
※ 本記事に登場するH君のケースは、当院でよくいただくご相談の流れを再構成した典型例であり、特定の個人を示すものではありません。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療を保証するものではありません。症状や経過には個人差があります。

