変形性膝関節症の方が避けるべき運動・するべき運動
「ひざが痛いから、運動はやめた方がいいですよね?」
「ウォーキングはいいって聞くけど、痛い時にも続けていいの?」
「正座やしゃがむ動作は、避けた方がいいって本当?」
——変形性膝関節症と診断された方が、誰しも一度は迷うのが「運動との付き合い方」だと思います。
実は、変形性膝関節症の治療において、運動は薬と同じくらい大切な要素だと国際的なガイドラインに書かれています。
ただし、「何でもやればいい」「とにかく動けばいい」というわけではありません。
「避けた方がいい運動」と「積極的にやるとよい運動」の見極めが大切なんです。
今回は、よくいただくご相談を例に、変形性膝関節症の方が避けるべき運動・するべき運動、そして上手な付き合い方について書きたいと思います。
「動いた方がいいの?休んだ方がいいの?」Jさんの話
先日、こんなご相談がありました。
65歳の女性、Jさん。
退職後の今、ご友人との外出や軽い運動を楽しまれていた矢先に、両ひざに痛みが出てくるようになりました。
「整形外科で『変形性膝関節症』と言われて、痛み止めとヒアルロン酸の注射をしてもらっています。でも、運動については『無理しない程度に』としか言われなくて。」
「ウォーキングは健康に良いって聞くけど、歩くとひざが痛むんです。痛い時は休んだ方がいいのかな、でも動かないとますます弱るんじゃないかなって…。何をしていいのか分からなくて困っています。」
— Jさん(65歳女性)
このJさんのお話、「動いた方がいいの?休んだ方がいいの?」というジレンマに心当たりがあれば、ぜひ最後まで読んでみてください。
「動かない」も「動きすぎる」も両方よくない
まず、大切な前提をお伝えします。変形性膝関節症のケアにおいて、「動かない」のも「動きすぎる」のも、どちらも望ましくありません。
動かないと、こうなる
・ひざを支える太ももの筋肉(特に大腿四頭筋)が弱る
・関節が固まって、可動域が狭くなる
・関節を栄養する組織液の循環が悪くなり、軟骨の状態が悪化する
・体重が増えやすくなり、ひざへの負担が増える
・気持ちの面でも、外出や活動範囲が狭まる
動きすぎると、こうなる
・関節への負担が積み重なり、痛みや炎症が強くなる
・水(関節液)が溜まる
・夜間に痛んだり、翌日に強い痛みを引き起こしたりする
つまり、ちょうどよい「量」と「種類」の運動を見つけることが、変形性膝関節症と上手につき合うコツなんです。
2025年に英国医学雑誌(BMJ)で発表された大規模な研究(217の臨床試験、約15,000人を統合)では、変形性膝関節症の方には「有酸素運動(ウォーキング・サイクリング・水中運動など)」が最も効果的で安全だと結論づけられています。「ひざに悪いから歩くな」ではなく、「むしろ歩いた方がいい」が、最新の科学的な答えだったのです。ただし、これは「正しい方法で」という条件付き、という点が大事です。
避けた方がよい運動|ひざに大きな負担をかける動き
ここからが本題です。まず、変形性膝関節症の方が「避けた方がよい運動・動作」を見ていきましょう。
ジャンプ系・着地のある運動
バレーボール、バスケットボール、ジョギング(特にアスファルトでの長距離)、縄跳びなど、繰り返し着地の衝撃が加わる運動は、ひざにとって大きな負担になります。「楽しいから」とつい無理してしまいがちなので、注意が必要です。
急なターン・切り返しのある運動
テニス、バドミントン、サッカーなどの「急に方向を変える」動作は、ひざの内側に大きな負担をかけます。長年やってきた方は、強度や頻度をぐっと落とすか、別の運動への切り替えを検討する場面です。
深くしゃがむ・正座を長時間続ける
ひざを深く曲げる姿勢は、関節への負担が大きくなります。特に、しゃがんだ姿勢での草むしりや、長時間の正座は避けたい動作。どうしても必要な場合は、こまめに姿勢を変えましょう。
「無理して頑張るウォーキング」
「健康のために1日1万歩」と頑張りすぎて、ひざが痛むのに無理に続けてしまうケース。距離より「翌日に痛みが残らない範囲」を優先しましょう。
重いものを持って階段を上り下りする
重い荷物を抱えての階段は、ひざにとても大きな負担がかかります。可能なら荷物を分けて運ぶ、エレベーター・エスカレーターを使うなどの工夫を。
「避ける」というより「上手に減らす・形を変える」のがコツです。
たとえば、テニスを完全にやめるのではなくダブルスに切り替える、ジョギングを早歩きに変える、といった調整で続けられることも沢山あります。
積極的にするとよい運動|ひざを守りながら鍛える
次に、変形性膝関節症の方に「積極的にやってほしい運動」をご紹介します。これは、複数の国際的なガイドライン(OARSI、ACR、EULARなど)でも推奨されているものです。
ウォーキング|最も推奨される運動
平らな道を、自分のペースで、痛みが翌日に残らない範囲で。
靴をしっかりしたウォーキングシューズに、必要に応じてインソールを使用しましょう。
1日30分まとめてでも、10分×3回に分けてでも構いません。
サイクリング・エアロバイク|ひざに優しい有酸素運動
自転車は、体重が車体にかかるため、ひざへの負担がウォーキングよりさらに少なくなります。
サドルを少し高めに設定して、ひざを深く曲げないことがポイント。
雨の日や暑い日でも続けやすいエアロバイクもおすすめです。
水中ウォーキング・水泳|痛みが強い時期にも
水の浮力でひざへの負担が大幅に減ります。痛みが強くてウォーキングがつらい時期にも、水中なら歩ける方が多いです。
プールが近くにある方には、ぜひおすすめしたい運動です。
太もも前の筋トレ|ひざを支える筋肉を守る
太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)は、ひざを支える最も重要な筋肉です。
仰向けで膝を伸ばしたまま脚を持ち上げる運動、椅子に座って片足ずつ膝を伸ばす運動など、ひざに負担をかけずにできる種目を毎日数分でも続けると、痛みの軽減につながります。
太極拳・ヨガ(穏やかなもの)
ゆっくりとした動きでバランスや柔軟性を養う運動も、変形性膝関節症の方に有効と複数の研究で報告されています。
深く曲げる動きを避けて、無理のない範囲で取り組むのがコツです。
すべての運動に共通する原則は、「翌日に痛みが残らない範囲で」「少しずつ・継続して」です。最初は5分、10分から始めて、痛みの様子を見ながら少しずつ増やしていく。これが安全で効果的な進め方です。
「動いた後、痛みが2時間以内に治まる」程度なら、その運動量は適切と判断する目安になります。逆に、痛みが翌日も残る場合は、運動量や種目を見直すサインです。
放っておくとどうなる?
「痛いから、できるだけ動かないようにしている」
——お気持ちはよく分かります。
でも、運動を避け続けると、こんなふうに進行する可能性があります。
👉 太ももの筋力がさらに低下し、ひざを支える力が弱る
👉 関節が固くなり、日常動作がますます辛くなる
👉 動かない時間が長くなり、体重が増えやすくなる
👉 外出や活動範囲が狭まり、生活の質が下がる
👉 気持ちの面でも、活力や意欲が低下しやすくなる
逆に、適切な運動を続けている方は、症状の進行が緩やかで、長く自立した生活を送りやすいことが、多くの研究で示されています。
当院は「100年歩ける身体づくり」を理念に掲げていますが、ひざの健康は、これからの何十年もの生活の質を支える基盤です。
痛みと上手につき合いながら、動く習慣を保つことが、なによりの長期戦略になります。
改善への道筋|Jさんの3ヶ月
変形性膝関節症のケアは、国際的なガイドライン(OARSI、ACRなど)でも、運動療法と体重管理、生活習慣の見直しが「治療の基本」とされています。
Jさんが実際にやってきたことを、時系列でご紹介します。
ひざの可動域、太ももの筋力評価、歩行分析、靴のチェック。
Jさんの場合、太ももの前の筋力が左右ともかなり低下していて、歩く時にひざが内側に入りやすい動きのクセが見えてきました。
Jさんに合った運動量を一緒に探りました。ウォーキングは10分から始めて、痛みの様子を見て少しずつ伸ばす。並行して、自宅でできる太ももの筋トレ(仰向けで脚を上げる運動を10回×3セット)を毎日続けてもらいました。
歩行時のひざのブレに対しては、矯正用インソール(フォームソティックス・メディカル)を導入。
靴もウォーキング用にしっかりしたものに切り替え。「足元が安定するだけで、ひざが楽になる」とのお話でした。動作面では、ひざが内側に入らない歩き方、椅子からの立ち上がり方の工夫もお伝えしました。
状態の改善に合わせて、エアロバイクと水中ウォーキングをご家庭の運動メニューに追加。「ひざを休ませる日」と「動かす日」をうまく組み合わせることで、Jさんは3ヶ月目には、ご友人とのウォーキングも30分続けて歩けるようになっていました。
「『運動した方がいいけど、何をどれくらいやっていいか分からない』が、いちばんつらかったです。今は、自分のひざに合った運動量や種目が分かったので、毎日が前向きに感じられます。何より、また友達と歩けるようになったのが嬉しい。」
— 3ヶ月後のJさん
※ここでご紹介したケースは、当院でよくいただくご相談の流れを再構成した典型例です。改善のスピードや経過は、変形の程度・年齢・生活習慣・取り組み方などによって個人差があります。重度の場合は、人工関節置換術などが選択肢となることもあります。
「歳のせい」と諦める前に
変形性膝関節症は、「歳のせい」と一括りにされがちですが、運動の量・種類・足部の土台・体重・動作のクセなど、関わる要素は複数あります。
要素がある以上、できる対処も複数あります。
ただ、これらは痛み止めや注射だけでは届かない部分。
「避けるべき運動を見極めること」「するべき運動を続けること」「ひざを支える筋力を保つこと」「足元を安定させること」を組み合わせることで、生活の質の維持・改善が期待できます。
もし今、「何をしていいか分からない」と運動をやめてしまっている方がいらっしゃったら、それは方向転換のタイミングかもしれません。
動かないほど筋力は落ちていきますので、できれば早めに専門家へご相談ください。
当院でなくても構いません。
変形性膝関節症を「運動の見直し」「足元の土台」「動作の改善」まで含めて評価してくれる治療院や整形外科であれば、相談する価値は十分にあります。「歳のせい」で終わらせないでください。
鳥取市で変形性膝関節症・膝の痛みのご相談は
「ひざが痛くて運動できない」「何をしていいか分からない」「ウォーキングを続けたい」など、些細なことでも遠慮なくご相談ください。
- 📍 鳥取市内でアクセス便利
- 🚶 変形性膝関節症・ひざの痛みに対応
- 🦶 足元の土台・動作改善まで丁寧に
- 🔍 原因に合わせた丁寧なご説明
※ 重度の変形・関節液貯留・手術が必要と考えられる場合は、整形外科等への受診をご案内することがあります。
- Hu Z, et al. Comparative efficacy and safety of exercise modalities in knee osteoarthritis: systematic review and network meta-analysis. BMJ. 2025; (BMJ-2025-085242).
- Bannuru RR, Osani MC, Vaysbrot EE, et al. OARSI guidelines for the non-surgical management of knee, hip, and polyarticular osteoarthritis. Osteoarthritis Cartilage. 2019;27(11):1578-1589.
- Kolasinski SL, Neogi T, Hochberg MC, et al. 2019 American College of Rheumatology/Arthritis Foundation Guideline for the Management of Osteoarthritis of the Hand, Hip, and Knee. Arthritis Care Res. 2020;72(2):149-162.
- Fransen M, McConnell S, Harmer AR, Van der Esch M, Simic M, Bennell KL. Exercise for osteoarthritis of the knee. Cochrane Database Syst Rev. 2015;1:CD004376.
- Brosseau L, Taki J, Desjardins B, et al. The Ottawa panel clinical practice guidelines for the management of knee osteoarthritis. Part three: aerobic exercise programs. Clin Rehabil. 2017;31(5):612-624.
※ 本記事に登場するJさんのケースは、当院でよくいただくご相談の流れを再構成した典型例であり、特定の個人を示すものではありません。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療を保証するものではありません。症状や経過には個人差があります。

