「もう癖だから」と諦めていませんか?〜何度も足首を捻る人に共通する、3つのサイン〜
「また足首やっちゃった」
「平らな道なのに、なんでか分からないけどガクッとなる」
「もう癖だから、付き合っていくしかないかな…」
当院にも、こうした悩みでご来院される方は決して少なくありません。
年代もスポーツ歴もさまざまですが、口を揃えて言われるのが「もう癖だから仕方ない」という言葉です。
でも実は、その状態には医学的にちゃんとした名前がついていて、適切なアプローチで改善が期待できる症状なんです。
今回は、よくいただくご相談を例に、「足首の捻挫グセ」の正体と、見落としがちな3つのサイン、そして改善への道筋についてお話ししたいと思います。
「もう癖だから」と諦めていたAさんの話
先日、こんなご相談がありました。
30代の女性、事務職のAさん。
学生時代はバスケットボール部に所属していて、当時から「捻挫しやすい体質」だったそうです。社会人になってからも、半年に1回くらいのペースで足首をひねっていました。
「もう本当に何回やったか分からないくらいで…。歩道のちょっとした段差とか、家の中の段差でもグキッとなるんです。腫れても2、3日で引くから、もう湿布貼って放っておくのが当たり前になっていて。」
「でもこの前、娘と公園に行ったときに大きく捻ってしまって、その日歩けなくなってしまったんですよね。さすがにこのままじゃまずいなと思って…」
— Aさん(30代・事務職)
このAさんのお話、もし「自分のことかと思った」と感じたなら、ぜひ最後まで読んでみてください。
その「捻挫グセ」、医学的にはこう呼ばれています
Aさんのように、過去に捻挫をしてから何度も同じ足首を捻ってしまう状態を、「慢性足関節不安定症(Chronic Ankle Instability:CAI)」と呼びます。
捻挫がきっかけで、足首の「ぐらつき」と「とっさのバランス反応」が両方とも低下してしまっている状態のこと。
これは決して珍しい状態ではありません。むしろ、足関節捻挫を経験した方の約40%が、こうした慢性的な不安定症に移行すると複数の研究で報告されています(Fraser et al., 2016 ほか)。
1990年代から研究が進み、2014年には世界中の研究者で作る「International Ankle Consortium(国際足関節コンソーシアム)」が国際的な診断基準を発表しています。「個人の感覚」だったものが、いまや研究と臨床で扱われる正式な評価対象になっているんです。
つまり、体質ではなく状態。
そして状態である以上、変えていける余地があるということです。
共通する3つのサイン|あなたは大丈夫?
では、どんな状態が「慢性足関節不安定症」と呼ばれるのか。Aさんを含め、ご相談に来られる方には共通する3つのサインがあります。
なんでもない場所で「ガクッ」と抜ける
平坦な道、家の中、わずかな段差。Aさんが言っていた「歩道のちょっとした段差」もまさにこれです。痛みがない時にも起きるのが特徴で、「気をつけているはずなのに、無意識に」と感じる方が多くいらっしゃいます。英語では「giving way(ギビング・ウェイ)」と呼ばれ、過去12ヶ月で2回以上起きていれば、国際的な基準のひとつに該当します。
1年に2回以上、同じ足首を捻挫している
軽い「ぐねり」もカウント対象です。同じ側を繰り返すのがCAIの典型的なパターン。「もう慣れた」「すぐ腫れも引くから」と感じている状態こそ、靭帯と神経の協調性が低下しているサインです。一度捻挫をすると再受傷リスクは大きく上がることが研究で示されていて、繰り返すほど慢性化していく傾向があります。
「足首が頼りない」という主観的な不安感
これが意外と見落とされがちなサインです。走るとき、不整地、階段を下りるとき。「力が入らない感じ」「踏み込めない」という主観的な不安感も、CAIを構成する重要な要素なんです。客観的な検査で「異常なし」と言われても、本人の感覚が不安定であれば、それ自体が研究上CAIの一部とされています。スポーツをしている方では「切り返し動作で全力を出せない」「着地が怖い」という形で現れることもあります。
3つすべてが揃っていなくても大丈夫。2つ以上当てはまるな…と感じたら、一度専門家に相談してみることをおすすめします。早い段階で対処するほど、改善も早いというのが現場での実感です。
どうして「クセ」になってしまうのか
「靭帯が伸びたから足首がゆるんでいる」——多くの方がこんなイメージを持っていらっしゃるのですが、実はそれだけではないんです。
足首の不安定さには、大きく分けて2つの要素があると考えられています。
靭帯そのものの「ゆるみ」
これは比較的イメージしやすい話です。過去に捻挫した時に伸びてしまった靭帯(特に外側の前距腓靭帯)が、完全には元に戻りきっていない状態。関節そのものに「ゆるさ」が残っています。
足首の「センサー」の感度低下
ここからが、見落とされがちな大事な話です。
実は足首の中(正確には靭帯や関節周囲)には、位置や動きを感じ取るセンサーがたくさんあります。専門用語では「固有受容感覚(こゆうじゅようかんかく)」と呼ばれていて、これが「危ない方向に倒れそう!」という瞬間を脳に伝え、足首周りの筋肉に「踏ん張れ!」と指令を出してくれているわけです。
ところが捻挫でこのセンサー機能が傷つくと、「危ない瞬間」を察知するのが0.数秒遅れる。その間に足首は内側に倒れてしまい、また捻挫してしまう——これが「捻挫の悪循環」と呼ばれる仕組みです。
多くの方は①と②の両方が混在しています。湿布で腫れが引くと「治った」と感じてしまうのですが、②のセンサー機能は安静にしているだけでは回復しないんです。だから何度も繰り返してしまう。
逆に言えば、②は適切なトレーニングで改善できる余地が大きい部分。ここに希望があります。
放っておくとどうなる?
「腫れも引くし、痛みもすぐ治まるんだから、別に放っておいていいんじゃない?」——こう考える方は多いと思います。
でも、繰り返す捻挫は、関節そのものに少しずつダメージを蓄積させていきます。複数の研究で報告されているリスクをまとめると、こんな感じです。
👉 軟骨が削れて、痛みが取れにくくなる(距骨骨軟骨損傷)
👉 長期的に関節の変形が進む可能性(変形性足関節症)
👉 スポーツでの踏み込み・切り返しの質が落ちる
👉 将来、高齢期になってから転倒リスクが上がる
当院は「100年歩ける身体づくり」を理念に掲げていますが、足首は身体の土台の中でも、特に細やかなバランス制御を担っている関節です。今のうちに対処することは、競技だけでなく10年後、20年後、そしてもっと先の自分の足を守ることになります。
改善への道筋|Aさんの3ヶ月
「治らない」と思われがちな慢性足関節不安定症ですが、2018年に英国スポーツ医学誌(BJSM)で発表された国際的なエビデンスベース臨床ガイドライン(Vuurberg et al.)でも、まずは保存療法(手術以外)が第一選択とされています。
具体的にどんなことに取り組むのか。冒頭でご紹介したAさんが実際にやってきたことを、時系列でご紹介。
足部の評価、歩行分析、シューズチェック、足首の安定性テスト。Aさんの場合、右足の過回内(足が内側に倒れやすい状態)が顕著で、それが捻挫を繰り返す根本原因のひとつとして見えてきました。
足のアーチをサポートする矯正用インソール(フォームソティックス・メディカル)を導入。それまで普段履きにしていたゆるめのスニーカーから、足に合った靴に変更。これだけでも「歩いていて足首がぶれる感じが減った」とのお話でした。
片足立ち(目を閉じて/クッションの上で)、チューブを使った足首の外返し運動などのバランス・神経筋トレーニングを開始。4〜12週間のバランストレーニングは、多くの研究で再受傷予防に有効と報告されているアプローチです。最初はふらつきが大きかったAさんも、3週目には目を閉じても30秒キープできるように。
歩道の段差、雨の日のマンホール、子どもとの公園遊び——日常で「ガクッ」となる場面が、少しずつ減っていきました。Aさんご自身が「あ、今まで気がついていなかっただけで、毎日けっこう怖い瞬間があったんだ」と気づかれたのも、この時期です。
「なにより、足首のことを気にせず歩けるって、こんなに楽なんだなって。今までは無意識に身構えていたんだと思います。娘と走ったり、ちょっとしたお出かけも怖くなくなりました。」
— 3ヶ月後のAさん
※ここでご紹介したケースは、当院でよくいただくご相談の流れを再構成した典型例です。改善のスピードや経過は、ご年齢・スポーツ歴・足部の状態・取り組み方などによって個人差があります。
「もう癖だから」と諦める前に
足首の不安定感は、「固有受容感覚の回復不全」や「靭帯の機械的なゆるみ」という、原因がはっきりしている状態です。原因がある以上、対処の方法も存在します。
ただ、これらは湿布や安静だけでは戻らない部分。段階的なトレーニングと、足部の土台補正を組み合わせることで、改善が期待できます。
もし今、「あ、これ自分のことかも」と思った方がいらっしゃったら、それは早く気づけたという、とても良いタイミングです。繰り返すほど対処に時間がかかる症状なので、できれば早めに専門家へご相談ください。
当院でなくても構いません。
足首の不安定症をきちんと評価してくれる治療院や整形外科であれば、相談する価値は十分にあります。「もう癖だから」で終わらせないでください。
鳥取市で足首の不安定症のご相談は
「月に何度かガクッとなる」「スポーツに自信を持って戻りたい」「お子さん・ご家族の足首が心配」など、些細なことでも遠慮なくご相談ください。
- 📍 鳥取市内でアクセス便利
- 🏃 慢性不安定症・スポーツ復帰に対応
- 🦶 インソール・テーピング指導も可能
- 🔍 原因に合わせた丁寧なご説明
※ 骨折・重度の靭帯損傷が疑われる場合は、整形外科等への受診をご案内することがあります。



- Gribble PA, Delahunt E, Bleakley C, et al. Selection criteria for patients with chronic ankle instability in controlled research: A position statement of the International Ankle Consortium. J Athl Train. 2014;49(1):121-127.
- Hiller CE, Refshauge KM, Bundy AC, Herbert RD, Kilbreath SL. The Cumberland ankle instability tool: a report of validity and reliability testing. Arch Phys Med Rehabil. 2006;87(9):1235-1241.
- Hertel J. Functional anatomy, pathomechanics, and pathophysiology of lateral ankle instability. J Athl Train.2002;37(4):364-375.
- Vuurberg G, Hoorntje A, Wink LM, et al. Diagnosis, treatment and prevention of ankle sprains: update of an evidence-based clinical guideline. Br J Sports Med. 2018;52(15):956.
- Fraser JJ, Koldenhoven RM, Saliba SA, Hertel J. Reliability of ankle-foot morphology, mobility, strength, and motor performance measures. Int J Sports Phys Ther. 2017;12(7):1134-1149.
- O’Driscoll J, Delahunt E. Neuromuscular training to enhance sensorimotor and functional deficits in subjects with chronic ankle instability. Sports Med Arthrosc Rehabil Ther Technol. 2011;3:19.
※ 本記事に登場するAさんのケースは、当院でよくいただくご相談の流れを再構成した典型例であり、特定の個人を示すものではありません。本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療を保証するものではありません。症状や経過には個人差があります。

